磨斧作針 まふさくしん

タイトルの『磨斧作針』は、日々小さな努力を積み重ねよ、という故事。テニスコーチからのありがたいお言葉。3年ぶりのはてなブログは凝った設定はせずにユルユルと綴ります。

愛しの…

就職して何度目かのボーナスで腕時計を買った。

ン十年前の話だ。

それまでしていたものが安物で、今度こそと気合を入れて、勤務先の近くの日本橋三越で買った。

セイコーの、当時流行りだった高い水圧にも耐えるスポーツ系のレディスもの。

嬉しかった。

みんなに見せびらかしたかったけれど、本当に見せたかったのは一人の男性。

 

そのころの私は、同期入社したある男性に恋をしていた。

ぜんぜんイケメンでもなんでもなかったけど、大好きだった。

その彼がボーナスで腕時計を買うと言っていたので、時計の話で盛り上がろうと。

 

それまでも二人で映画を観に行ったり、プロ野球観戦に行ったり、ご飯に行ったりしたいたけど、ただの友人でしかないままだった。

たまに「帰りにホテル行く?」と誘ってきたけど、私が「うん」って言ったら、あわてて「やだなー、冗談だってばー」とはぐらかすのはわかってた。

そんな彼とは結局友人止まりのまま、私は高校の同級生を無難に結婚し、無難に今日を過ごしている。

 

そしてその腕時計。

ン十年間、ざぶざぶ海に入っても、何度かジムやプールのロッカールームに忘れても、なぜか私のそばから離れず、苦楽を共にしてきてくれた。

なのに、昨日仕事につけて行こうとしたら止まっていた。

ガラスケースの中が曇っているから水が入ってしまったらしい。

 

近所の時計やさん(これもレトロな店で、老人の店主が細々とやっている)に早速持ち込んで、今修理を頼んだところ。

さて、結果はいかに?

もちろん、もし直らなくても、一生私のそばには置くつもり。

当時の愛しのNさんとの思い出と一緒に。

愛しの腕時計。